名古屋大学における教材の作成・利用に関するガイドライン
令和7年3月25日 研究戦略・社会連携推進分科会 学術データ基盤整備部会
1. はじめに
(1) ガイドラインの目的と背景
コンピュータの進展により,教育の目的を達成するために講義等で用いられる教材は多様化し,個々の教員が工夫をしながら講義等に提供している。講義等で用いる教材における教員の権利を明らかにし,その利活用をすすめるため本ガイドラインを定める。
(2) 講義等の定義
本ガイドラインで扱う「講義等」とは,名古屋大学通則第19 条第2 項で示された講義,演習,実験,実習若しくは実技又はこれらの併用による多様な方法により実施するものを言う。なお,大学院においても同様の解釈とする。
(3) 教材および素材の定義
教育の目的を達成するために用いられる資料を教材と呼ぶ。教材には,コンピュータなどを用いて作成,加工された教材を含み,これらには,文書教材(図表が掲載されているものも含む),マルチメディア教材(画像,動画,音声,VR・AR),インタラクティブ教材(授業中の小テスト,定期試験,入試問題等のオンラインテストを含む)などや,それらを組み合わせたものがある。
教材を作成するもととなる材料を素材と呼ぶことにする。すでに存在する教材を素材とすることもある。
(4) 本ガイドラインが対象とする教材
本ガイドラインでは,名古屋大学(以下,「本学」という。)の講義等で使用する教材を対象とする。なお,本学以外の教職員(非常勤講師等)が作成し講義等で使用する場合も含む。
(5) 教材の作成
教材の作成とは,教育目的を達成するために,新たに素材から教材を創作することである。
(6) 教材の公開
教材の公開とは,他者が教材を利用できる状態にすることである。これにより,教育活動の効率化と質の向上に寄与することを目的とする。
(7) 教材の利活用
教材の利活用とは,すでにある教材を利用することで,教育効果を向上し,さらに多くの知的成果等が生み出されるようにすることである。
(8) 教材の二次利用
教材の二次利用とは,他者が作成した教材を素材として新たに教材を作成または公開することである。本ガイドラインでは,教材の作成及び公開に含めることとする。
2. 教材を作成する者に対する指針
(1) 基本原則
自分自身が作成した素材だけを用いて教材を作成する場合,法人著作を除き著作権は,作成者にある。
(2) 教材の内容に対する配慮
内容や表現の適切さに配慮しなければならない。誹謗中傷や他人の名誉を毀損する内容,差別的表現,思想信条に関する内容,国際情勢に関する内容,公序良俗に反する表現,その他,法律に反する内容等が無いか等について注意しなければならない。
(3) 素材に対する配慮
素材の著作権,知的財産権,秘密保持契約(NDA)等に配慮し,著作権法第35 条及び「改正著作権法第35 条運用指針」等に基づいて使用しなければならない。
素材に含まれる個人情報を削除しなければならない。
3. 教材を公開する者に対する指針
(1) 基本原則
公開にあたっては,著作権法等に従わなければならない。著作権者の許諾が必要な教材や,特定の利用条件が付されている素材は,適切な許諾を得た上で公開しなければならない。
(2) 利用条件の明示
公開された教材に,その利用条件を明示しなければならない。自由利用マーク,クリエイティブ・コモンズライセンス等を利用して,「コピー配布可能」,「障がい者利用可能」,「商業利用禁止」,「改変不可」などのライセンス条件を明示しなければならない。
(3) 公開方法
教材の公開のために,本学が提供する設備(TACT,OCW,NUSS,情報メディアスタジオ,名古屋大学学術機関リポジトリなど)を利用することができる。そのときは,それぞれの利用規定等を遵守しなければならない。
(4) 公開後の更新
教材を定期的に見直さなければならない。これにより,教材が常に最新の情報や学術的進展を反映し,長期的に利用可能な教育リソースとしての価値を維持できる。
(5) 安全保障輸出管理
オンライン講義等で,海外居住者または国内非居住者もしくは特定類型該当者に対して,公知でない技術を提供する場合は,東海国立大学機構安全保障輸出管理規程に基づき,承認を得なければならない。
4. 教材を利活用する者に対する指針
(1) 基本原則
教材や素材の著作権およびその他の権利者に対する法的義務および公正な慣行に従わなければならない。
(2) 二次利用
教材の二次利用を行う場合,「2. 教材を作成する者に対する指針」に従わなければならない。
5. 生成AI の利活用
本学における「教育研究における生成AI の利活用について」の指針をもとにする。
6. ガイドラインの改訂
(1) 基本方針
本ガイドラインは,教材の利用環境や法規制などに応じて見直し,必要に応じて改訂しなければならない。
(2) 改訂のプロセス
改訂が必要と判断された場合,ガイドラインの改訂案を作成し,法務的な確認を経たのち,研究戦略・社会連携推進分科会及び教育分科会において承認を受けなければならない。
7. 参考文献
- 学校における教育活動と著作権(令和5 年度改定版),文化庁著作権課
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/93869701_01.pdf - すごくわかる著作権と授業,AXIES
https://axies.jp/_media/2024/03/20240313_すごくわかる著作権と授業_PDF版.pdf - 改正著作権法第35 条運用指針(令和3(2021)年度版),著作物の教育利用に関する関係者フォーラム
https://sartras.or.jp/wp-content/uploads/unyoshishin_20201221